茨城の茅葺き民家

私事で申し訳有りませんが、民家の記録撮影にあたって近く(関東)は後にして先ずは遠くからと東北・近畿・中国に重点を置いてしまい、さて近くと動いた時は既に手遅れ、戦後昭和四十年代に盛んだった建築・民族学の諸先生による調査書にある多くの貴重な民家を記録する機会を失ってしまい残念でなりません。
時代の技術で諸先生がスケッチ或いはモノクロ写真でしか記録出来なかった民家を出きる限り忠実にカラーで記録したいと言う私の思いは達せられませんでした。

茨城は地元で長年茨城を愛し民家を撮影されているY氏の案内で辛うじて記録することが出来ましたが、霞ヶ浦、利根川沿いに在った鍵屋、曲がり屋は既に消滅し、一部例外を除いて県下ほとんど寄棟、直家でした、 県の北部で茨城が発祥の地と地元では言われている「曲がり屋」の生きている家と保存民家を見ました.
県央部は耕作面積率日本一を誇る豊かな田園地帯で屋敷林に囲まれた,見事な茅葺き民家と現在でも出会うことができます。

茨城の民家探訪の楽しさは何と言っても「筑波流茅手」と呼ばれる職人の見事な技です、美しく巻き込んだ竹簀の棟仕舞い(グシ)、調和のとれた形の良い「煙出し」、芸術的とも言える棟小口の棟端飾り(キリトビ)、軒の手の込んだ「トオシ」「化粧縁」等見る者を飽きさせません。

情報・・・・茨城の写真家柳下さんが素晴らしい写真集を出版しました、「民家探訪・旅行メモ」の項に詳細があります。




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土浦市 白鳥町 (1997.5)

この見事な軒の線、なんと言ったらよいの でしょうか、当主の趣味?土地の流行? いずれにしても伝統の技術が有ってこそ。

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八郷町 佐久  (2007.7)

関東では見ますが、他所では余り見ない 棟端飾り(キリトビ)の豪華版を多数見ます、 「筑波流茅手」の腕の見せ所。

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八郷町 上青柳  (2000.8)

正面ではない軒の裏に手の込んだ見事な技を 披露する職人の粋な芸術、これはその中でも 「大名縁」といわれます。

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大子町 上之宮  (1999.9)

煙出しは何処にも有りますが、実用より デザインを考えたのではないかと、 思わせる調和の取れた美しい棟仕舞。